経営方針
経営トップ×社外取締役 対談
「デクセリアルズのさらなる成長と企業価値向上に向けて」

不確実で先が見えない社会において、経営トップと社外取締役が当社の持続的成長と企業価値の向上、サステナブルな社会の実現について率直に意見を交わしました。
なお、「デクセリアルズ統合レポート 2022」の一部を抜粋する形で掲載しております。

代表取締役社長
新家 由久

代表取締役 専務執行役員
佐竹 俊哉

社外取締役(指名・報酬委員長)
横倉 隆

社外取締役
田口 聡

社外取締役(監査等委員長)
佐藤 りか

社外取締役
加賀谷 哲之
これまで:3年間の振り返りと課題認識
佐竹先ずは2019年から5ヵ年計画で推進中の中期経営計画。これまでの3年半をどのように評価していますか。また、現在の課題認識をお教えください。

新家3年半前、私は厳しい経営状況下で「自分たちの将来はこれまでの延長線上にはなく、変わらないと存続できない」と強い危機感を抱き、今日まで構造改革の断行、会社の形や仕組み、経営体制の変革などを進めてきました。
その結果、今ようやく成長に向けたスタートラインに立てたと感じています。

佐竹事業ポートフォリオの見直しや構造改革を通じて「稼ぐ力」の回復に注力しつつ、コロナ禍ではいち早くリモートワーク制度を全社展開して働き方を変革、本社の栃木への移転を通じて経営と現場の一体化も図ってきました。
また、2021年には監査等委員会設置会社へ移行し、指名・報酬委員会の仕組みも見直しました。
こういった変革の成果が経営成績にも表れた結果、社員の自信にもつながり、新しいことに挑戦する力もついてきたのだと思います。
横倉そうですね。当社はこの3年間経営基盤強化に精力的に取り組んできました。そしてコロナ禍にあっても一貫して自らの強みである技術力やビジネスモデルを磨き続け、業績向上につなげてきました。そして、社外取締役の会合や合宿等の機会も含め、役員同士がより頻繁に意見交換できるようになったことや、議論に必要な情報・資料の共有が大きく増えたことも取締役会における議論の質の向上につながっています。

田口社外取締役として1年半、全社的な戦略・政策のみならず、個別の重要案件に関しても、取締役会において活発に議論し適切な意思決定に参加することができました。不確実性の高い事業環境下、今後、当社のパーパスを踏まえて将来のありたい姿を描き、その実現に向けて、当社の強みを活かした戦略シナリオを策定・実行すること、そして確実にリスクをマネジメントしつつ、その戦略シナリオに従って適切な事業運営や経営判断がおこなわれているかをきちんとモニターしていくことが大切です。
佐竹監査等委員としてはこれまでをどのように評価していますか。
佐藤当社がおこなった監査等委員会設置会社への移行は、執行側の役員や社外取締役、そして支えてくれるスタッフなどの関係者全員が、より良いガバナンス体制に向けて同じ意識で動くことで初めてその効果が出てきたと感じます。
これをさらに良い形に変えていくためには今後も継続的な努力が必要で、高い意識をもって取り組むことが大事だと思います。

加賀谷最近の議論では、モニタリング・ボードにおける社外取締役の限界として、「情報不足」、「資源・時間の不足」、「意欲の限界」が指摘されています。ただ、当社の場合は、監査等委員として必要なミクロの情報も迅速かつオープンに共有され、技術の現場を視察するなどのさまざまな機会もあり、情報共有や時間の面で安心感があります。また、株主・投資家の方々と同じ目線を保つべく、役員持株会を通じた当社株式の保有を認めていただくことで、意欲の限界の緩和にもつながっています。そういった意味では私が社外取締役に就任して1年半の間にも、モニタリング・モデルの着実な進化が見られます。
佐藤私は、監査等委員会の委員長として内部監査から監査結果に至るまでの確認事項なども踏まえ、そのなかでも違法性・妥当性監査の機能を発揮できることに注力しながら、取締役会において重要な議論では会社法で求められる範囲を超えて情報・資料を共有するなど、取締役会の監督機能の充実、モニタリング・モデルの強化に貢献していきたいと考えています。
佐竹当社では社長が取締役会議長を務めていますが、監査等委員会設置会社移行後の取締役会の運営について、どのように評価されていますか?
新家取締役会議長としても、この1年半の間に取締役会は相当変化してきたと実感しています。外部環境変化を意識した、より全社的、中長期視点での議論が深まり、それが執行サイドにも波及し、執行役員会などにおける、議論の質の向上につながりました。社外取締役の皆さんとの議論を通じてより強固な信頼関係が築けたことも質の高い議論ができている要因の一つです。
株式会社京都セミコンダクター(以下「京セミ」)の子会社化には決断まで1年近く議論を重ねてきましたが、最終的には社外取締役の皆さんから背中を押していただいたことが大きかったと実感しています。
田口取締役会で中長期的な視点から京セミに関する議論を深めていくなかで、同社は当社が新たに進出を目指すフィールドに有意義な技術を有し、これと当社の技術や人財とを融合すれば、大きな成果を生む可能性があり、当社のありたい姿の実現につながっていくものと判断いたしました。
これから具体的に事業創造を実現できるかがポイントですが、将来発生するであろうサクセスストーリーの先行ケースになると信じています。

横倉監査等委員会設置会社に移行し、監査状況を取締役会で共有できるようになり、ガバナンスがより機能してきたと思います。京セミには魅力や可能性を感じる技術フィールドがあり、長期的に見てこのM&Aは正しい判断だと考えています。
一方で、本件は大型投資でもあり、今後どう拡大・発展に導いていくのかを考えていかねばなりません。
佐竹取締役会が、中長期的な経営戦略など経営の大きな方向性に関して、その思想や方針段階から議論をおこなえるようになってきていますが、さらに議論の質を高め、深化させていくことが大事だと思います。
これから:中長期的な持続的成長と企業価値の向上の実現に向けて
佐竹取締役会においてもサステナビリティに関する討議を活発におこなっているところですが、将来に向け、当社が取り組むべきデクセリアルズらしい重要な課題(マテリアリティ)とは何であるとお考えでしょうか。
新家将来に向けた課題としては、自社のビジネスモデルの強化とそれを支える技術、人財への投資、そして目まぐるしく変わる外部環境にいかに機敏に対応できるかが重要課題と考えています。
横倉当社の強みは主に人的資本と知的資本から形成されています。従って技術と人財の強化が何といっても重要な課題です。そのうえでダイナミックで活力ある組織活動が生まれる体制づくりも重要なことと考えます。
田口特に人財の強化については、中長期的な戦略ストーリーのなかで求められる人財像を明確にしたうえで、個別具体的に何をどのように取り組むのかを打ち出すことも重要です。

佐藤また、人財強化の一環として、ジェンダーや国籍を含めたダイバーシティを進めていくことも必要です。このことは、多様な世の中のニーズをとらえ続けていくうえでも大切なことだと考えています。
加賀谷今後、当社は自らの強みであるビジネスモデルにレバレッジを利かせて、成長軌道に乗せていくことが求められます。それを牽引するのが技術力と人財だと思います。特に、リーダーシップを発揮し、価値創造を実現できる中核人財の育成・確保がキーであり、そういった人財がチャレンジをすることで、これまでになかった価値の創出につながるのではないかと考えています。
新家近年、さまざまな企業の方々との交流の機会が増えたほか、京セミの主要顧客とのミーティングなどにも参加し、これまで接点がなかった方々からも当社に強い関心をもっていただけるようになりました。
当社の技術が新たな技術と融合することで、今までとは異なる産業における社会課題の解決や成長機会につながる可能性を感じています。
佐竹サステナビリティ経営を目指していくうえで、取締役会が果たすべき役割と皆さんご自身がどのような役割を果たそうとしているのかお教えください。
横倉私はESGと言われる分野のうち、コーポレート・ガバナンスが最も重要と考え、高度なガバナンスの実践に引き続き取り組みます。特に経営者のサクセッションプランは持続的に成長していくうえでの一丁目一番地です。
また、デジタル社会の発展とともに事業を展開する当社は、直接的ではなくとも社会の発展や人々の生活に貢献する一役を担っています。これが当社の社会的な存在意義でもあり、今後も事業を通じた新たな価値を創出していくことが重要です。
田口当社が成長戦略に従って「攻め」の経営をおこなうためには、それを支える「守り」の経営も重要です。倫理的な側面を含めコンプライアンス問題発生防止のための体制と仕組みを構築し、その成果や功績をきちんと評価することが求められます。
これは、リスクマネジメントの一部として、取締役会としても適切にモニターしていく必要がありますので、この点で私の経験を活かしていきたいと思います。
佐藤私は法律家として、具体的に起こりうる法的リスクの指摘・共有を通じて、中長期的な目線で取締役会での議論や意見交換をモニタリングしつつ、当社がありたい姿を達成できるよう貢献していきます。
加賀谷企業のサステナビリティと社会のサステナビリティの同期化は、一般に難しいという声もあるなかで、私は、企業としての利益だけに偏ることなく社会のための意思決定を促すことも社外取締役の役割だと考えています。
私が持つ財務会計や企業評価の知識・知見をもとに、当社の得意分野を見極め、財務・非財務の両面から社会に対して当社が何をしていくべきか提言していきたいと思います。
佐竹競争力の源泉となる、技術、知的財産、人財を始めとした非財務価値の可視化は経営課題の一つです。役員報酬の評価指標にサステナビリティ関連のKPIを組み込むことについて、指名・報酬委員長のご意見をお聞かせください。
横倉社会の一員としてぜひ検討を進めるべきです。また、当社の得意分野で社会に貢献できる領域は大きく、当社と社会のサステナビリティは十分同期できるとも思います。
佐竹最後に、当社がサステナブルな社会にどのように貢献していこうとしているのか、社長としての思いをお聞かせください。
新家これまでも、エレクトロニクスの進化になくてはならない材料を先回りして開発・提供することにより、お客さまの課題の解決に貢献することを着実に実現してきました。
そして現在、さまざまな社会課題を解決するためにデジタル化の進化が多大な貢献をするという「未来予想図」があります。当社がその進化になくてはならない会社になることが、社会と当社のサステナビリティの同期化に向けた一つのキーワードと考えています。
デクセリアルズが将来にわたって社会から必要とされる存在となり、持続的な成長と企業価値向上を実現できるよう、全社一丸となって取り組んでまいります。