環境への取り組み
TCFD提言への取り組み
気候変動問題は、持続可能な社会の実現のために人類が解決すべき重要な課題であり、気候変動への対応は企業にとって事業継続の前提条件であると考えています。
当社は、2021年9月、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言の趣旨に賛同を表明し、気候変動に対する経営上のリスクと機会への適時、適切な対応および情報開示を通じて持続可能な社会の実現に貢献していきます。
また、当社独自の製品・技術により新たな価値を提供することで、将来の世代に豊かな環境を残すための取り組みを推進し、ステークホルダーの皆さまとの共生を目指していきます。
TCFD提言に基づく情報開示
ガバナンス
当社は、気候変動を重要な経営課題として位置づけ、持続可能な社会の実現に向けた活動を推進しています。
CSR推進部門担当役員をトップとするサステナビリティWGを定期的に開催し、重要課題に基づき設定した目標にかかる進捗等を部門横断的に議論しており、重要な事項は執行役員会・取締役会へ報告し指示を受けることとしています。

戦略
当社は、2050年の長期的な時間軸において、気候変動に伴うリスクと機会を特定するため、気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)の第6次評価報告書や国際エネルギー機関(IEA: International Energy Agency)の世界エネルギーの見通し(WEO:World Energy Outlook)などを参考に、1.5-2℃シナリオと4℃シナリオを考慮したシナリオ分析を実施しています。2022年度は、シナリオ分析の対象製品を拡大するとともに、新たにシナリオ群の定義、事業インパクト評価、対応策の検討をおこなっています。
今後も、分析対象を他の製品へ拡大することで、全社戦略のさらなる充実を図っていきます。
各シナリオの世界観
1.5-2℃シナリオ
脱炭素への取り組みが進展した結果、産業革命前の水準からの平均気温上昇が今世紀末までに2℃未満に抑えられている。
- 参考:
持続可能開発シナリオ(Sustainable Development Scenario: SDS)
2050年ネットゼロ実現シナリオ(Net Zero Emissions by 2050:NZE2050)
4℃シナリオ
脱炭素への取り組みが進展せず、産業革命前の水準からの平均気温上昇が今世紀末までに4℃以上となる。
- 参考: 公表政策シナリオ(Stated Policies Scenario:STEPS)
1.5-2℃シナリオの世界 | 4℃シナリオの世界 |
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・脱炭素社会、循環型社会の実現に向けた動きが加速する。 ・電源構成に占める太陽光や風力をはじめとした再生可能エネルギーの比率が大幅に増加する。 ・CO2排出量に対して炭素税率が大幅に引き上げられる。 ・循環型社会への移行により、バイオやリサイクル由来材料への転換が加速する。 ・社会の効率化が進み、超スマート社会へ移行していく。 ・自動車市場では電動化や自動運転への移行が進み、車内空間が居住空間へと変化する。 |
・海水面上昇、高潮、洪水、豪雨等のリスクが顕在化し、自社及びサプライヤーの操業に影響が生じ、対応コストが増大する。 ・化石燃料の需要が増加し、化石燃料コストが増大する。 ・気温上昇、災害の増加、感染症の拡大等に伴い、在宅時間の長期化など、ライフスタイルが変化する。 |
気候関連のリスクと機会とそれらに対する主な取り組み
「反射防止フィルム」、「異方性導電膜(ACF)」、「光学弾性樹脂(SVR)」、「表面実装型ヒューズ」を対象に気候関連のリスクと機会を特定し、事業に大きな影響を与える可能性のある重要なリスクと機会を抽出し、それらの取り組みについて検討をおこないました。
TCFDシナリオ分析

事業インパクト評価(財務影響評価)
「反射防止フィルム」と「異方性導電膜(ACF)」に対する2030年予想財務影響評価を以下に示します。
1.5-2℃シナリオでは、温室効果ガス(GHG)排出量規制の強化や炭素税導入により、炭素税やエネルギー、原材料などの調達コストが増加しますが、スマート社会への移行によるデジタル化の拡大により、デジタル機器に使用される「反射防止フィルム」や「異方性導電膜(ACF)」の売上機会も拡大し、持続的な成長が想定されます。
4℃シナリオでは、化石燃料への依存が続き、化石燃料の需要増加に伴うコスト増加や平均気温の上昇や豪雨や洪水による気象災害による物理リスクの影響により売上機会の喪失につながり、成長の鈍化が想定されます。
今後は、「光学弾性樹脂(SVR)」、「表面実装型ヒューズ」についても評価を進めてまいります。
財務影響のイメージ


リスクマネジメント
当社グループでは、リスク管理に関する規定に基づき、リスクマネジメント委員会を設置してグループ全体のリスク管理に努めています。
また、「気候変動」は経営基盤リスクの一つとして位置づけ、取り組みをおこなっています。
リスク管理責任者であるコーポレート管理部門管掌の執行役員が委員長を担当し、各専門領域の部会で構成され、定期的(必要に応じて臨時)に委員会を開催しています。特定した重点リスク項目は定期的に執行役員会に報告され、さらに経営上、事業上の重要なリスクに関しては取締役会に報告しています。
指標と目標
当社は、CO2排出量を気候関連の評価指標と定め、2030年までに事業由来の電力消費によるCO2排出量ゼロの達成をめざしています。
さらにシナリオ分析を踏まえ、事業活動における温室効果ガスの削減などの長期的な気候変動の指標および目標を検討していきます。