環境への取り組み
気候変動(TCFDに沿った開示)
気候変動への対応は、持続可能な社会の実現に不可欠であり、当社グループの事業継続の前提条件でもあります。当社グループは2050年カーボンニュートラルの実現を掲げ、サプライチェーン全体でのCO₂排出量削減に取り組みながら、リスクと機会を適切にとらえ長期的な企業価値向上を実現します。
TCFD開示フレームワークに基づく情報開示
当社グループは、2021年9月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明し、気候変動がもたらす経営上のリスクと機会を適時・適切にとらえながら、持続可能な社会の実現に向け、実効性の高い活動に取り組んでいます。また、当社独自の製品や技術を通じて新たな価値を提供し、将来の世代に豊かな環境を残すための取り組みを推進するとともに、ステークホルダーとの協働を目指します。この考え方に基づき、透明性の高い情報開示と取り組みを通じて、長期的な企業価値の向上を実現していきます。
戦略
当社グループは、2050年のカーボンニュートラル社会の実現に貢献するため、CO₂排出量(Scope1,2)の削減を着実に進め、さらにScope3を含むサプライチェーン全体のCO₂排出量の削減にも積極的に取り組みます。また、新たに拡張する鹿沼事業所第2工場を始めとした製造事業所のスマートファクトリー化と拠点全体の省エネ化によるエネルギー利用効率向上と生産性の両立にも取り組み、社会の脱炭素化に貢献していきます。
これらを達成するために、2028年度までにCO₂排出量(Scope1,2)を2019年度比で38%削減、Scope3は排出量の削減目標を設定し削減施策を実行へ移すことを目標としています。
また、当社グループでは2050年を見据えた長期的な視点から、気候変動に伴うリスクと機会を特定するため、2℃未満シナリオと4℃シナリオの2つを考慮したシナリオ分析を実施しています。これに基づき、順次対象事業ユニットの範囲を拡大し、事業への影響評価や対応策の検討を進めています。
① シナリオ分析対象製品
当社グループでは、CO2排出量に大きな影響を与える主要製品を優先して、2021年度からシナリオ分析を実施しています。2025年度は新たに「精密接合用樹脂」を分析対象に追加し、これにより当社グループの主要製品にあたる7つの事業カテゴリー※1のシナリオ分析を完了しました。
- ※17つの事業カテゴリー:反射防止フィルム(ARF)、異方性導電膜(ACF)、光学弾性樹脂(SVR)、二次保護ヒューズ、無機光学素子、フォトニクス関連製品、精密接合用樹脂。これらの事業カテゴリーで売上構成比約87%を占めます。
取り組み状況 (年度)
CO₂排出量(Scope1,2)カバー率(連結)(年度)
② シナリオの設定
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)が提示する将来的なシナリオに基づき、当社グループへの影響を考察し、財務インパクト試算および移行リスク・機会に向けた取り組みについて検討しました。
| 設定シナリオ | 概要 | 参照シナリオ |
|---|---|---|
| 2℃未満 シナリオ |
脱炭素への取り組みが進展した結果、産業革命前の水準からの平均気温上昇が今世紀末までに2℃未満に抑えられている。脱炭素社会、循環型社会の実現に向けた動きが加速する。 |
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| 4℃ シナリオ |
脱炭素への取り組みが進展せず、産業革命前の水準からの平均気温上昇が今世紀末までに2℃を超える。 |
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③ 財務インパクト試算結果
2025年度における成長戦略との連動性を踏まえ、TCFD提言に基づき、以下の3つの時間軸で財務インパクトの分析を実施しました。
・短期:2028年度(現中計最終年度)
・中期:2030年度(気候変動に関する中期目標年度)
・長期::2033年度(次期中計最終年度(想定))
今回は、短期にあたる2028年度の財務インパクトに焦点を当て、下図にて主な影響とその要因を整理しています。
④ 2℃未満シナリオに基づく財務インパクト試算結果
現中計における事業利益は計画時から0.9%の増益を見込んでいます。2023年度の試算では0.7%の減益を見込んでいましたが、最新の国際機関による予測や事業活動の進展を反映し、財務インパクトを修正しました。増益の主な要因は以下の通りです。
・材料費の見直し: レアメタルなど材料の供給量が拡大する見通しとなり、単価上昇リスクが緩和※2
・事業機会の拡大:環境配慮材の導入対象を拡大し、製品価値向上による増益を試算に反映
一方、今回の試算における移行リスクの主な要因は、炭素税の導入による事業運営コストの増加となります(7つの事業カテゴリーに共通する課題)。
また、国際的な気候変動シナリオや業界動向(お客さまがとらえているリスク・機会)を分析し、第三者の助言を踏まえ移行機会を整理しました。検討の結果、以下のような機会を特定しています。
・EVおよびEV生産拡大に貢献する製品※3の需要拡大
・環境配慮による製品の付加価値向上と売上増加
このほか、当社グループのフォトニクス技術はデータセンターの電力消費削減への貢献が期待されています。現在、国際機関が提示する将来的なシナリオとの整合性を調査中です。確認でき次第、当該技術の販売機会を「移行機会」として財務インパクト試算に反映させることを検討しています。
これらの移行リスク・機会への対応策については、当社グループの生産・事業部門と組織横断的な議論を重ねつつ、今後の取り組みにつなげる予定です。
- ※2国際エネルギー機関(International Energy Agency)などの将来予測を基に当社にて検討
- ※3反射防止フィルム(ARF)、二次保護ヒューズ、フォトニクス関連製品
⑤ 4℃シナリオに基づく財務インパクト試算結果
現中計における事業利益は、計画値から7.5%減少する見込みです。2023年度の試算では7.9%の減益を見込んでいましたが、最新の国際機関による予測や事業活動を反映し、財務インパクトを修正しました。主な修正点は以下の通りです。
・炭素税単価の見直し: 炭素税単価がさらに高まると予測
・材料費の見直し:レアメタルを含む材料の供給量が拡大する見通しとなり、単価上昇リスクが緩和※2
事業機会としては、EVの普及の遅れに伴いEV関連製品の売上機会は減少すると予測する一方、当社製品が関わる「車載ディスプレイの大型化」や「自動運転技術の高度化」への影響は限定的と見ています。
物理リスクは、気象災害の激甚化による洪水リスクに注目し、ハザードマップを基に洪水による想定被害を約5.2億円と試算しました。物理リスクの影響を含めると、中計の事業利益は計画値から8.5%減少すると見込まれます。
- ※2国際エネルギー機関(International Energy Agency)などの将来予測を基に当社にて検討
⑥ 気候関連のリスク・機会と主な取り組み
抽出したリスクや機会は、気候変動や規制の変化、技術革新などの社会的変化の視点から整理し、それぞれに対する対応策を以下の通り検討しています。重要度は「影響度」と「発生可能性」の2軸で評価し、特に重要と判断したものは中計に反映し、さらに検討を進めています。
| 分類 | 気候変動リスク/機会項目 | 事業への影響 | 影響を受ける期間※4 | 財務的影響※5 | 対応方針・対応策 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 移行リスク (2℃未満) |
政策・ 法規制 |
カーボンプライシング 導入による炭素税の上昇 |
|
短期~長期 | 小 |
|
| 温室効果ガス(GHG)排出量削減に関する規制強化 |
|
短期~長期 | 中 | |||
| 技術 | 脱炭素・循環型社会に向けた技術の進展 |
|
短期~長期 | 小~中 |
|
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| 評判 | 消費者の思考変化、 お客さまの方針変更 |
|
|
|||
| 移行機会 (2℃未満) |
政策・ 法規制 |
GHG排出量削減に関する規制強化 |
|
短期~長期 | 小 |
|
| 小~大 |
|
|||||
| 技術 | 脱炭素・循環型社会に向けた技術の進展 |
|
短期~長期 | 小~中 |
|
|
| 物理的変化 (4℃) |
急性 | 気象災害の激甚化 |
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短期~長期 | 小 |
|
| 慢性 | 地球温暖化による平均気温の上昇 |
|
短期~長期 | 小 |
|
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- ※4期間:短期:2028年度(現中計最終年度)、中期:2030年度(気候変動に関する中期目標年度)、長期:2033年度(次期中計最終年度(想定))
- ※5財務的影響:小:10億円未満、中:10億円以上、大:40億円以上
- ※6FEMS:Factory Energy Management System(工場エネルギーマネジメントシステム)
指標と目標(移行計画)
当社グループは、国際的な気候変動基準に沿って、2024年度に策定したCO₂排出量削減目標の実現に向けた取り組みを進めています。IPCC 第6次評価報告書(AR6)によると、地球温暖化による世界全体の平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃以内に抑えるためには、2030年までに世界全体の温室効果ガス(GHG)排出量を2019年比で約43%削減する必要があるとされています。この科学的知見は、パリ協定およびCOP28 で示された国際的な方向性とも整合しています。
当社グループは、こうした科学的知見を踏まえながら国際的な枠組みにコミットし、以下の中長期的なCO₂排出量削減目標を設定しています。
〈中長期のCO₂排出量削減目標〉
● Scope1,2:2030年度末までに2019年度比で46%削減
● Scope2:2030年度末までに排出ゼロを達成
現在、鹿沼事業所第2工場の拡張に伴い、スマートファクトリーの構築を通じた生産プロセスの自動化・効率化を目的とした取り組みを進めており、すでに工事に着手しています。また、低炭素燃料への転換の検討や、事業継続計画(BCP)を考慮したコージェネレーションシステムの導入に向けた準備も進行中です。
さらに、パリ協定を始めとする国際的な枠組みが掲げる「2050年カーボンニュートラル」の目標を踏まえ、それに整合する移行計画の着実な実行と、目標達成に向けた推進体制の強化に取り組んでいます。
2050年カーボンニュートラルに向けた移行計画
GHG排出量(Scope1,2)※7
- ※7海外販売拠点のGHG排出量を2024年度に算定し、過去分についても再計算を実施
CO2排出量(Scope1,2,3)に関する取り組み
当社グループは、事業活動に伴う温室効果ガス排出量の削減を重要な経営課題の一つと位置づけています。特にScope1,2における自社の排出削減に加え、サプライチェーン全体を視野に入れたScope3の把握と削減を進めることで、気候変動緩和への貢献を目指しています。こうした取り組みは、2050年カーボンニュートラル達成に向けた移行計画の重要な柱であり、国際的な基準やガイドラインに沿って推進しています。
CO2排出量の削減(Scope1,2)
〈2024年度の実績〉
・排出量は29.6千t-CO₂で、前年度比約6%削減(2019年度比では約37%削減)
・全海外拠点をScope1およびScope2算定範囲に追加し、より包括的な排出量把握を実現
〈2024年度の主な削減施策〉
・生産設備の最適運用による省エネ化
・再生可能エネルギー証書の購入
・低炭素燃料への転換やコージェネレーションシステムの導入を検討
CO2排出量の可視化拡大(Scope3)
2024年度は、これまで対象としていたデクセリアルズ株式会社およびデクセリアルズ フォトニクス ソリューションズ株式会社登米事業所に加え、同会社の全拠点、および海外拠点であるDexerials(Suzhou)Co., Ltd.とDexerials Singapore Pte. Ltd.を算定対象とし、Scope3排出量の把握をさらに強化しています。
デクセリアルズのCO2排出量(Scope3)カテゴリー別内訳※8
- ※8カテゴリー8、9、10、11、13、14、15は該当する活動がないため算定対象外
第三者機関による検証
Scope1,2,3 すべての排出量は、2023年度に続き2024年度も、国際的な基準・ガイドラインに準拠した第三者機関※9 の検証を受けており、報告数値の信頼性と正確性が確認されました。
- ※9ソコテック・サーティフィケーション・ジャパン株式会社の第三者検証を受けています
今後も当社グループは、各Scopeでの削減活動を着実に進めるとともに、Scope3算定を継続・拡大し、サプライチェーン全体での排出削減に取り組みます。これらの活動を通じて、事業成長と環境負荷低減の両立を図り、持続可能な社会の実現に貢献します。
ガバナンス
代表取締役を最高責任者として、専務執行役員 経営戦略本部長および執行役員 コーポレートリスク統括の指揮命令のもと、関係部署が参画する「サステナビリティワーキンググループ」を組織し、気候変動への対応を含む、持続可能な社会の実現に向けた活動を推進しています。サステナビリティワーキンググループは、ESG 重点課題で設定されたCO₂排出量削減目標および達成に向けた活動を継続的にモニタリングし、取締役会および執行役員会に報告しています。これにより、監督機能の強化を図り、気候変動対応を経営戦略および事業戦略の立案・遂行にフィードバックしています。また、部門横断的な視点から取り組むことで、活動の充実化と社内の意識醸成を推進しています。
リスク管理
当社グループは、リスク管理に関する規程に基づき「リスクマネジメント委員会」を設置しています。委員会は、リスク管理最高責任者である代表取締役の監督のもと、執行役員 コーポレートリスク統括が委員長を務め、気候変動担当組織が必要に応じて活動・報告を行います。気候変動に関する事項は経営基盤リスクの一つとして位置づけ、特定した重要項目は執行役員会に報告し、必要に応じて取締役会で対応策を検討します。
カーボンニュートラルの実現に資する人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)への参画
2050年のカーボンニュートラル実現のために水素活用が重要視されています。
2025年度には、新たに環境省が主導する「人工光合成の早期社会実装に向けた取組加速化に関する検討会」がスタートし、オールジャパンでの取り組みが進んでいます。当社は、CO₂フリーの安価なグリーン水素製造が可能となる人工光合成技術実現を目的とした人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)に、第2期(2022~2031年)より参画しています。本取り組みは、経済産業省が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に造成したグリーンイノベーション(GI)基金事業の一環として開始されたものです。
世界で初めて人工光合成の実証試験を実施するなど、日本が世界をリードするこの技術分野において、企業や研究機関が触媒開発、水素分離膜の開発、安全性検証の各テーマで、社会実装を見据えた技術開発を進めています。
人工光合成技術の概要
人工光合成技術とは、太陽光を利用し光触媒で水を分解して水素・酸素を得る技術です。太陽光の10%程度のエネルギー利用を目指しています。
得られた水素はCO₂と反応させることでエチレンのような化学原料をつくり、CO₂も削減できます。
温室効果ガスの削減 ~気候変動への対応~
地球規模の気候変動は、化石燃料などを起源とする温室効果ガスの排出や大気汚染物質の排出などによってもたらされると考えられています。温室効果ガスのうち、CO2は省エネルギー活動によって人為的に削減することが可能です。また、オゾン層を破壊しないものの温室効果が二酸化炭素の100倍から10,000倍以上とされる代替フロンHFC(ハイドロフルオロカーボン)の設備機器からの排出抑制や、ノンフロン・低GWP(地球温暖化係数)※10化によっても気候変動を抑制することが可能です。
当社グループは、省エネルギー対策や、設備機器からのフロンの排出抑制など、気候変動への対応を重要課題として取り組んでいます。
- ※10GWP(地球温暖化係数):大気中に放出された単位重量の当該物質が地球温暖化に与える効果を、CO2を1.0として相対値として表したもの
主な取り組み
登米市 市有林 森林吸収オフセット・クレジット(J-VER)購入
省エネ効果の高い設備導入による電力削減(デクセリアルズ蘇州)
クリーンルームの休日の空調運転見直しによる電力削減(鹿沼事業所)
分析改良型省エネ手法による空調機電力、ガス削減(鹿沼事業所)
取り組みに対する外部評価
経済産業省 資源エネルギー庁の工場・事業場における省エネ法定期報告(令和4年度提出)に基づく事業者クラス分け評価制度において、当社は制度がスタートして以降、連続で省エネ優良事業者(Sクラス)に選ばれています。