プロセス技術
当社は、さまざまな機能性材料を製造するために材料を混合・分散・合成する有機材料系技術、結晶成長などの無機系技術、フィルム状の基材に材料を塗布または真空環境下で薄膜形成する技術、必要とされる形状に高精度に裁断する技術など、製造プロセスを構築する多くの技術を保有しています。小型化、高性能化が進むお客様の製品に役立てていただけるよう、多くの機械・電気・制御系の技術者が、新たな製造プロセスを求めて日々開発に取り組んでいます。
また、フィルムや無機基材そのものに微細な形状を形成することで、材料設計だけでは得られない、今までにない特別な機能を発現できる微細加工プロセスを構築していることも当社の特徴のひとつです。
微細構造形成技術
板状基盤上や曲面構造物にも形成できるナノからミクロンオーダーの微細構造体を形成
当社はフォトリソグラフィーなど半導体製造で広く使われている技術を用い、nmからμmオーダーの微細構造体を形成することが可能です。当社の強みは、その微細構造体を板状の基板上にも曲面構造物にも形成する技術を併せ持つことです。前者の技術は2008年に発売開始された無機偏光板など無機光学デバイス群に応用され、また、後者は長さ4,000mのロールフィルムに連続的に微細構造を形成する技術に応用され、各種業界向けに販売を開始しています。
これら微細構造体の開発業務には多数の物理・電気・機械系の技術者が携わっており、当社の化学系技術者と協力しながら、お客様が求められる機能を実現しています。
ここでは、市場の動向や課題に対し、当社の技術を活かすことによって高性能なモノづくりを実現したいくつかの実績例とその他に適用可能なアプリケーション例をご紹介します。
光をスマートに拡散することで光を有効活用する技術
近年プロジェクターなどで、エネルギー効率や環境対応の観点からレーザー光を光源に用いるケースが増えています。しかし、レーザー光は直進性が高く、光源として用いるためには拡がる光(拡散光)に変える必要があり、レーザー光を必要な角度で均一な明るさに拡げる無機拡散板が必要とされます。
当社は長年培ってきたユニークなマイクロレンズ形成技術を用いて、ガラスや石英などの透過性無機材料に高精度なレンズ形状を掘り込むことで、理想的な拡散特性を有する信頼性の高い拡散板の商品化に成功しました。
この技術が使われている製品例
円筒状の原盤に微細構造体を形成し、フィルム基材上に連続的に微細構造を転写する技術
自動車のドライバーや搭乗者への情報表示手段として、近年、液晶パネルなどのディスプレイが用いられるようになってきました。多くのディスプレイは車両前方のダッシュボード周辺に位置しているため、日光や周辺の車のライトなど外光の影響を受けやすく、そのような環境下でも高い視認性を確保する必要があります。
当社は長年にわたり微細構造を用いた高帯域にわたる反射防止機能を有するフィルムを実現するプロセス開発を進め、「円筒原盤に微細加工を施す技術」およびその原盤を用いた「ナノインプリント技術」を融合することにより、基材フィルム状へ連続的に微細構造体を形成し、優れた反射防止フィルムを量産することに成功しました。
この技術が使われている製品例
「円筒原盤に微細加工を施す技術」とは、図のように円筒状の原盤に対して精密機械加工あるいはフォトリソグラフィー技術を用いて微細なパターンを彫り込む技術のことです。
モスアイ形状のようなナノサイズから、反射板、拡散板やマイクロレンズアレイのようなミクロンサイズまでさまざまな微細構造を作ることができます。
また、同じ構造を連続的に作るだけでなく、任意の図柄パターンを原盤に描画することも可能です。
「ナノインプリント技術」とは微細形状を付けた原盤を用いて、ロール状のフィルムや基板上に反転パターンを転写・複製する技術です。
●上図は、ロール状のフィルム基材に連続的にパターン形成するプロセス(Roll to Roll プロセス)を記した図です。
ロール状に巻かれたフィルム基材を左から右に移動しながらそのフィルム基材表面に紫外線硬化樹脂を塗布し、微細パターンが彫られた円筒原盤に押し付けて紫外線を照射することで、微細パターンをロールフィルム上に転写します。
フィルム基材に転写されたパターンは、原盤のパターンの反転形状となります。
当社は原盤作製からナノインプリントまで社内で一貫生産しており、さまざまなアプリケーションにおいて細かなご要望に対応することが可能です。
例えばモスアイ形状は、自動車のインストルメントパネルやヘッドアップディスプレイ、迷光を極限にまで抑えたい光学素子などへの応用が可能です。
使用例
また、任意のパターン描画技術を用いて導光板に意匠性を持たせるようなユニークな使い方も可能です。