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サステナビリティマネジメント
知的財産の活用による価値創出
デクセリアルズグループでは、知的財産を重要な経営資産の一つととらえ、創造・保護・活用サイクルを回しつつ、IPランドスケープ※を用いて新規事業創出や事業評価をおこない、当社の企業価値向上と持続的成長を支えています。
- ※IPランドスケープ: 経営戦略または事業戦略の立案に際し、経営・事業情報に知財情報を取り込んだ分析を実施し、その結果(現状の俯瞰・将来展望等)を経営者・事業責任者と共有すること。
知的財産戦略の基本的な考え方
当社では、現中期経営計画と次期中期経営計画の期間にまたがる3つのステージで知的財産戦略を立案し、実行しています。現中期経営計画から始まった「コア特許活用戦略」においては、主力事業の競争力強化と、事業ポートフォリオの見直しに向けた施策として、事業カテゴリーごとの特許スコアを社内で分析し、事業の意思決定に活用しています。
また2021年5月に公表した「中期経営計画リフレッシュ(アップデート)」以降は「知財共創戦略」のもと、他部門と連携しながら新規領域のIPランドスケープを進めています。
これらの知財施策は「デクセリアルズ統合レポート2021」より開示を始めており、内閣府が公表した「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」に沿うものとなっています。さらに、次期中計においては、知財の事業貢献度などを積極的に開示し、投資家とのエンゲージメントを深めるべく、知財IR※領域での戦略立案・推進に取り組んでいきます。
これらの戦略を並行して推進することにより、知財の側面から当社の持続的成長と企業価値向上に貢献していきます。
- ※知財IR: 知財を起点とする投資家とのエンゲージメント(Investor Relations)
知的財産戦略ロードマップ
知的財産の確保と戦略的活用
事業競争力強化のため、当社ではグローバルな参入障壁の構築と、ビジネスモデル実現のための知的財産権の確保を進めています。
近年における当社の日本特許出願数に対する外国特許出願率は7 割を超えており、高い水準を維持しています。また、出願後に各国特許庁での審査を経て登録された海外特許の保有比率は全体の66%であり、当社事業の海外売上比率とほぼ同水準の比率となっています。
さらに、当社で開発・製造・販売する機能性材料・デバイス・製造方法などのさまざまなカテゴリーの発明等をグローバルで権利化することで、直接顧客から最終顧客まで幅広いソリューションの提案が可能となっています。
また、毎年の事業性評価に基づいて特許ポートフォリオを見直し、自社で実施しなくなった特許群については売却やライセンス活動を推進しています。例えば、最近では排水処理剤の一部の特許を他社に売却し、環境関連の技術や特許の有効活用と、知財のプロフィット化に貢献しています。特許ポートフォリオの見直しにより、知財リソースを新規の事業や開発テーマに転換していくことで、持続的な成長を支えています。
オープンイノベーション
事業部、コーポレートR&D、新規事業創出に関連する各部署との間で、IPランドスケープをベースとした連携や議論が活発に進んだ結果、オープンイノベーションの機運が高まり、ビジネスパートナーの探索にさまざまな特許分析を活用しています。
オープンイノベーション活動の一例としては、WIPO GREEN(世界知的所有権機関が推進する環境技術・知財のマッチング・プラットフォーム)に参画し、グローバルで100件を超える自社の環境関連特許の有効活用を図っています。さらに、2023年4月には、東北大学と共同で「光メタセンシング®共創研究所」を設立し、双方の知的財産を活かしたオープンイノベーションを促進していきます。
知財投資と経営指標の紐づけ
当社では年間の研究開発費の27%(2022年度実績)に相当する金額を知財投資として充てており、主に特許ポートフォリオ強化、知財ミックス(意匠、商標、ノウハウなど)、DX化への投資を積極的におこなっています。
一方、製造ノウハウなどの侵害立証が難しい技術については、あえて特許出願せずに秘匿することで、技術流出防止と事業競争力の維持に努めています。
また、特許分析ソフトウェアを用いた特許の価値評価、無形資産価値の可視化にも取り組んでいます。例えば、当社のEBITDAと特許スコアの相関性をモニタリングした結果、特許スコア(知財投資)に追従してEBITDA(稼ぐ力)が上昇しているという傾向が読み取れました。特許スコアが上昇してもEBITDAが上昇していない場合には、特許レバレッジが十分に利いておらず、知財アセットが過剰であるという状況も考えられます。事業状況を見極めながら、未活用特許の棚卸・削減をおこない、リーンな特許ポートフォリオの構築を進め、特許レバレッジを高めていきます。
知財マインドの醸成
当社では、毎年4月を「知財月間」と定め、知財講演会を始めとする啓蒙活動や発明考案表彰等を実施しています。さらに、定期的な社員向け知財教育だけでなく、外部の専門家によるワークショップなど、全グループ社員を対象とした継続的な知財教育をおこない、当社グループ全体の知財マインドの醸成を図っています。
なお、当社の知的財産部は約20名から構成され、米国弁護士1名、日本弁理士3名、知的財産アナリスト5名、知的財産管理技能士10名、ゴールド認定特許サーチャー(電気・化学)1名、中小企業診断士1名の専門的人材を擁しています。(2024年2月2日現在)
知的財産を活用して当社の企業価値をサステナブルに創出すべく、「変化・進化する組織」をモットーに掲げ、今後も戦略的な知財活動を実行していきます。