5G通信などの高速伝送向けFPCの製造を容易にする 低誘電ボンディングシート「D5300Pシリーズ」を開発
~液晶ポリマー(LCP)とポリイミド(M-PI)の両方に対応~

新製品

2019.06.05

デクセリアルズ株式会社(社長執行役員 新家 由久、東京都品川区)は、液晶ポリマー(LCP)と誘電率を下げた変性ポリイミド(Modified PI, M-PI)のいずれの基材にも使用可能なフレキシブルプリント基板(FPC)用層間接着材料、低誘電ボンディングシート「D5300Pシリーズ」を開発しました。

現在、5G通信などの通信・伝送の高速化が進み、その伝送路となるFPCには高周波の信号を損失なく伝えることが要求されています。多くの高速伝送向けFPCは、誘電率が低いLCPを基材として製造されていますが、市場のLCP供給量に限りがあり、高速伝送向けFPC製造の課題となっています。また、LCPは従来FPCの基材として用いられてきたポリイミドと材質が異なり、加工などの取り扱いが難しいため、生産効率が下がってしまうという点も課題でした。
このため、特に高速伝送の中でも6ギガヘルツ以下の信号を伝える用途では、LCPの代替としてM-PIを基材とするFPCが用いられはじめており、すでにスマートフォンのアンテナ接続などに採用されています。

このたび、当社が開発した「D5300Pシリーズ」はLCPM-PI両方の基材に対応する層間接着材料です。本開発品は昨年開発した、LCPを基材とするFPC用層間接着材料「D5200シリーズ」の材料構成を見直したことで、M-PIの接着も可能になりました。また、お客様ごとに異なる、FPC製造時の要求スペックを充足するべく、接着強度に優れる「D5310P」と耐熱性に優れる「D5320P」の2タイプを開発しています。

本開発品は誘電率(Dk)を2.3、誘電正接(Df)を0.0028に抑えており、LCPを基材とした6ギガヘルツ以上の高速伝送向けのFPCにも使用可能です。さらに従来品同様、180℃で接着可能なため、既存のFPC製造設備を使用できます。

また、UV-YAGレーザー加工性にも優れており、多層FPCでのブラインド・ビアホール形成においても、サイドエッチングを抑えて加工することが可能です。

■UV-YAGレーザーによるブラインド・ビアホール形成の例

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  • ※1ブラインド・ビアホール:多層FPCの表面と内側の層を電気的に接続するための穴。通常レーザー加工によって形成する。

なお、本開発品は6月12日(水)より、中国・深センでおこなわれる2019年世界FPC及応用材料産業大会会議内のセミナーにおいてご紹介する予定です。

■構造と特性
型番 D5310P D5320P
タイプ 高接着強度タイプ 高耐熱性タイプ
本開発品を使用したFPCの断面図(イメージ) img19_019_3.jpg
誘電率(Dk) 2.34 10GHz 2.36 10GHz
誘電正接(Df) 0.0028 10GHz 0.0028 10GHz
銅箔に対する接着強度 13N/10mm 10N/10mm
耐熱性 260℃ Pass 288℃ Pass
接着温度 180℃
既存設備の使用 使用可能