インクジェット塗布に対応した光学弾性樹脂 "Jettable SVR" を製品化
-複数のタブレットPCで採用決定、車載ディスプレイ向けも拡販開始-

製品

2022.03.24

 スマートフォン、自動車などに最先端の技術・材料・デバイスを提供するデクセリアルズ株式会社(本社:栃木県下野市、代表取締役社長:新家由久、以下、当社)は、インクジェット塗布方式に対応した光学弾性樹脂“Jettable SVR”(ジェッタブル エスブイアール 以下、jSVR)を製品化したことをお知らせします。本製品は複数のタブレットPCで採用が決まり、出荷を開始しています。

Jettable SVR

 当社の光学弾性樹脂“SVR”(エスブイアール 以下、SVR)は、ディスプレイパネル表示部とトッププレートの間にあるエアギャップを埋める液状紫外線硬化型アクリル樹脂で、トッププレートの材質に近い光学特性を付与することでエアギャップの界面での光の反射を防ぐとともに、視認性と衝撃吸収性の向上を実現する光学用透明接着剤(OCR/LOCA)です。2007年の上市以来、スマートフォンやタブレットPC、車載ディスプレイなどで採用されている世界シェアNo.1の製品※1です。

Jettable SVR ディスプレイ断面図(右:光学弾性樹脂“SVR”使用時)

 今回製品化した光学弾性樹脂“jSVR”は、印刷などに用いられるインクジェット塗布方式に対応することで、任意の位置に適切な量の樹脂を高い精度で塗布し、光学貼合することが可能です。これにより取り扱いやすさが向上するとともに、カメラやセンサーのためのノッチやパンチホールを有する特殊なディスプレイ形状への対応が容易となります。
 また、塗布厚を精密かつ連続的にコントロールできるため、一定の厚みを有するフィルム状材料である光学透明粘着テープ(以下、OCA)では対応が難しかった、曲面ディスプレイなどの箇所によって厚みが異なる3D形状ディスプレイにも対応可能です。さらに、OCAを用いると、形状・サイズを合わせるための抜き加工で廃棄ロスが発生するという課題がありましたが、本製品は必要な部位に必要な量だけ樹脂を塗布することができるため、廃棄ロスを削減し、環境負荷の低減を実現します。

 当社は2020年9月に“jSVR”を開発し、お客さまへの紹介やサンプル出荷、ご要望に応じた仕様の調整など製品化に向けた準備を進めてきましたが、このたびjSVRの長所をご評価いただき、複数のタブレットPCで採用が決定しました。

 なお、車載ディスプレイ向けの“jSVR”についても紹介を開始しています。車載ディスプレイでは、エレクロニクス製品よりもさらに特殊な形状のディスプレイが多く、要求される厚みの範囲も広いため、最適なソリューションとして多くの引き合いをいただいています。車載ディスプレイは、エレクトロニクス向けのディスプレイと比較して大型のため、インクジェット塗布や貼合をおこなう設備についても大型の設備が必要です。当社は2022年1月、本社・栃木事業所に車載ディスプレイ向けの大型の試作設備を導入しており、本試作設備を利用することでお客さまは自社に設備を導入することなく試作、検討が可能です。本設備を活用しながら車載ディスプレイ向けにも積極的に事業を展開してまいります。

 今後、自動車のCASE(Connected:接続性、Autonomous:自動運転、Shared & Service:シェアとサービス、Electric:電動化)や高速通信の普及をはじめとするデジタル技術の発展やアプリケーションの進化によって、情報のアウトプットを担うディスプレイが果たす役割はさらに重要になることが想定されます。当社はディスプレイのさらなる進化に寄与するとともに、これらの製品を生み出す中で培った技術を幅広い領域で活用して社会のデジタル化やIoT化を支えることで、社会課題解決への貢献を目指してまいります。

光学弾性樹脂“Jettable SVR (jSVR)”の詳細

■製品名
  • 光学弾性樹脂“Jettable SVR (jSVR)”
■特長
  • インクジェット装置による塗布に対応
    インクジェット塗布方式に対応することで、従来の光学弾性樹脂が持つ優れた光学特性はそのままに取り扱いやすさを向上。ノッチやパンチホールを有する特殊なディスプレイ形状への対応が容易
jSVR Hybrid SVR SVR
塗布方式 インクジェット塗布
インクジェット塗布
スリット塗布
スリット塗布
ディスペンス塗布
ディスペンス塗布
塗布貼合
方法
  • 樹脂を印刷のように必要な箇所に適切な量を塗布し、UV仮硬化をおこなう
  • その後、真空貼合をおこない、UV本硬化によって樹脂を硬化させる
  • 樹脂を一面に均一に塗布し、UV仮硬化により樹脂形状を保持させる

  • その後、真空貼合をおこない、UV本硬化によって樹脂を硬化させる
  • 樹脂量を計算し、トッププレート上に塗布する
  • その後、トッププレートを反転貼合することで樹脂を一面にぬれ広げ、UVによって樹脂を硬化させる
塗布形状
  • 塗布形状をソフトウエア上でコントロールできるため、四角形だけでなく様々な形に塗布可能
  • スリット塗布のため、塗布形状が四角形に限定される
  • ディスプレイから樹脂がはみ出さないようにするため、塗布形状パターンの構築や周辺にダム樹脂を塗布するなどの制御が必要
取り扱い
  • ディスプレイ変更による塗布形状の切り替えはソフトウエア上で実施するため、メンテナンスを最小限に抑えることができる
  • ディスプレイ変更による塗布形状の切り替え時にはハードウエアのメンテナンスが必要
  • ディスプレイ変更による塗布形状の切り替え時にはハードウエアのメンテナンスが必要
  • 塗布厚を精密かつ連続的にコントロール、3D形状のディスプレイにも対応
    塗布中に部分的に厚みを変えるなど、塗布厚を連続的にコントロールできるため、光学透明粘着テープでは対応が難しかった曲面ディスプレイなどの3D形状のディスプレイにも対応可能
  • 車載ディスプレイ向け製品も拡販開始、当社設備にて試作可能
    当社 本社・栃木事業所に車載ディスプレイで用いられる大型のディスプレイにも対応可能な大型の試作設備を導入。設備導入前に当社設備にてサンプルによる試作が可能です
■仕様
製品名 jSVR2
塗布装置 インクジェット
仮硬化条件 [mJ/cm2]3 500~1,000
本硬化条件 [mJ/cm2]4 1,000
粘度 [mPa・s]5 10~30
硬度6 E15~E40
屈折率7 硬化物 1.45~1.49
弾性率 [Pa]8 25℃ 104 106
保管温度 [℃] 10~30
  • ※1株式会社富士キメラ総研発行「2021ディスプレイ関連市場の現状と将来展望」による、ディスプレイの貼り合わせで使用される光学用透明接着剤(OCR/LOCA)の2020年の金額シェア。光学弾性樹脂(SVR)は、光学用透明接着剤の当社製品名です
  • ※2仕様数値は特定の型番のものではなく、対応可能範囲を示したものです。詳細な仕様については当社営業窓口にお問い合わせください
  • ※3LED 365nm
  • ※4メタルハライドランプ
  • ※5Rheo-meter @25°C
  • ※6Durometer (Code E)
  • ※7Abbe @25℃ D線 (589nm)
  • ※8DMS method:@1Hz