最表面の耐久性を40倍以上に高めた反射防止フィルム「HDシリーズ」製品化
-複数のノートPCメーカーで採用決定、車載ディスプレイにも最適-
製品
2022.01.26
スマートフォン、自動車などに最先端の技術・材料・デバイスを提供するデクセリアルズ株式会社(本社:栃木県下野市、代表取締役社長:新家由久、以下 当社)は、最表面の防汚層を真空蒸着法で形成することで、摺動耐久性を当社従来品比40倍以上※1に向上した反射防止フィルム「HDシリーズ」を製品化したことをお知らせします。本製品はすでに複数のノートPCメーカーでの採用が決まり、出荷を開始しています。
当社の反射防止フィルムは、スパッタリング技術※2を用いて金属酸化膜をナノ単位の精度で形成することで、優れた低反射性能を実現した、世界シェアNo.1の製品※3です。フィルムの最表面には指紋や汚れをつきにくく、また、容易に拭き取れるようにフッ素系樹脂を用いた防汚層を設けています。
今回製品化した反射防止フィルム「HDシリーズ」は、最表面の防汚層の摺動耐久性を40倍以上に向上させた製品です。従来の製品は溶媒に溶かした防汚材を塗布し、ヒーターによる乾燥で溶媒を揮発させて防汚層を作るウェットコーティング法を用いていましたが、本製品は防汚材を気化させ、基材である反射防止層に直接付着させる真空蒸着法を用いることで、より高耐久かつ低摩擦で滑りのよい防汚層を形成することが可能になりました。その高い摺動耐久性から、普及が進むタッチパネルを搭載したノートPCや、タブレット形状にもなる2in1タイプの機器、自動車の電装化にともないニーズが拡大する車載ディスプレイなどに適しています。
当社は2020年7月に「HDシリーズ」を開発し、2021年春に製造設備を導入しました。その後、お客さまへのご紹介やサンプル出荷、お客さまの認証の取得など、製品化に向けた準備を進め、このたび複数のノートPCメーカーでの採用が決定しました。また、現在はノートPCのみならず、スマートフォン、フォルダブル端末、車載ディスプレイなどの用途で、多くの引き合いをいただいています。そのなかでも特に車載ディスプレイ向けの反射防止フィルムは耐用年数が長く、温度や湿度などの使用環境も過酷であるため、より高い耐久性を持つ「HDシリーズ」が最適です。
なお、当社ではすでに、需要にこたえるべく車載ディスプレイ向けの「HDシリーズ」を高効率に生産できるように設計した新たな設備を本社・栃木事業所(栃木県下野市)に導入することを決定しており、2023年4月より稼働を開始する予定です。
今後、デジタル技術の発展やアプリケーションのさらなる進化によって、ディスプレイが果たす役割はさらに拡張・拡大することが想定されます。当社はスパッタリング技術で製造する反射防止フィルムをはじめとする独自の技術・製品・ソリューションを磨き上げ、ディスプレイの進化とともに、社会のデジタル化やIoT化、自動車の変革などに貢献してまいります。
反射防止フィルム「HDシリーズ」の詳細
■製品名
- 反射防止フィルム「HDシリーズ」
■特長
- 最表面の防汚層を真空蒸着法で形成
真空蒸着法を用いることで、防汚材の反応基が反射防止層側に向き、かつ均一に配列。緻密で強固な結合により、高い防汚性および低摩擦による高い摺動耐久性を実現。
- 最表面の防汚層の摺動耐久性を40倍以上※1に向上
初期の水接触角は120°を実現。不織布ワイパーを用いた摺動性試験において、摺動回数が20,000回以上を超えても水接触角110°以上を維持。
- 既存の製造設備に加え、2023年4月に稼働する新たな設備でも生産可能
既存の製造設備に真空蒸着装置を導入し、量産を開始。2023年4月に稼働する新しい製造装置では反射防止層と防汚層を一貫して高効率に成膜可能。
■仕様
本製品 「HDシリーズ」 |
当社従来品 | 試験条件 | ||
---|---|---|---|---|
防汚層の形成方法 | 真空蒸着法 | ウェットコーティング法 | ||
型番 | AR200-T0830-JD-HD | AR200-T0810-JD | ||
ヘイズ(%) | 0.3 | 0.3 | JIS K7105-6.4 | |
全光線透過率(%) | 96 | 96 | JIS K7105-5.5 | |
視感度反射率(%) | 0.17 | 0.17 | JIS Z8701 | |
反射色相 | a * | 2.3 | 2.2 | JIS Z8781 |
b * | -8.2 | -7.4 | ||
鉛筆硬度 | 3H | 3H |
JIS K5600-5-4 に準じて |
|
耐擦傷性 |
2,000往復 |
10往復 傷なし |
スチールウール試験 |
- ※1耐摺動性試験(不織布ワイパー)による当社従来品(AR200-T0810-JD)比
- ※2スパッタリング技術:真空環境下でターゲット材にイオン化したアルゴンガスを衝突させ、弾き出した原子を対象物に付着させることで薄膜を形成する技術で、半導体の製造などでも活用されています。
- ※3株式会社富士キメラ総研発行「2021ディスプレイ関連市場の現状と将来展望」による、 表面処理フィルム(ドライコート)の2020年の金額シェア