蛍光体フィルム「PSシリーズ」を製品化
~直下型LEDバックライト搭載液晶ディスプレイのダイナミックレンジ拡大、広色域化および薄型化を実現~

製品

2021.04.27

デクセリアルズ株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:新家由久、以下 当社)は、直下型LEDバックライト搭載液晶ディスプレイのダイナミックレンジの拡大と広色域化、さらに薄型化に貢献する、蛍光体フィルム「PSシリーズ」を製品化しました。本製品は高精細液晶ディスプレイへの採用が決定しており、出荷を開始しています。

蛍光体フィルム

現在、ディスプレイは4K、8K対応など高解像化が進んでいますが、さらに高輝度化・高コントラスト化・広色域化などの高画質化が求められています。
このため、ディスプレイの輝度やコントラスト(ダイナミックレンジ)を向上させるとともに、色域を拡大するために、光を効率よく取り出すことができ、明暗を制御しやすい直下型LEDバックライトの採用が広がっていますが、白色LEDを使用した場合、発光具合に個体差が出やすいという課題がありました。

このたび当社が製品化した蛍光体フィルム「PSシリーズ」は緑色と赤色の蛍光体をフィルム状にしたものです。本製品をディスプレイ内部に組み込むことで、白色LEDに代わって発光具合のばらつきが少ない青色LEDを光源に使用することができ、白色LEDを使用した直下型LEDバックライトに比べ、高い品質のディスプレイの製造を可能にします。

また、本製品を用いることで光源が青色単色になるため、白色LEDを光源に用いた場合に比べLEDの配光制御が容易になり、光源と拡散板の距離を近づけることができ、ディスプレイ全体の薄型化に貢献します。


■蛍光体フィルムの使用例(直下型LEDバックライトを用いた液晶ディスプレイ断面図)
蛍光体フィルムの使用例

本製品には当社が独自に開発した硫化物緑蛍光体を使用しています。この硫化物緑蛍光体は、当社の要素技術である無機材料合成技術を用いることによりシャープなPLスペクトルで鮮やかな発光を実現し、液晶ディスプレイの広色域化に貢献します。


■硫化物緑蛍光体の発光スペクトル(PLスペクトル)
  • PL:Photoluminescence(フォトルミネッセンス)

加えて、蛍光体フィルムの発光ムラを抑制するためには、蛍光体の粒子径を小さくする必要がありますが、一方で表面積が大きくなることから耐湿性が低下し、バリアフィルムを用いないと信頼性が低下するという、トレードオフの関係にあります。当社はムラを抑制するために粒子径を小さくすると同時に、粒子の表面に特殊な処理を施すことで耐湿性を向上させ、バリアフィルムを用いずにフィルム化することを可能にしました。


さらに、蛍光体フィルムの下部に青色光だけを透過し、緑色光、赤色光を反射するダイクロイックフィルターを取り付けることで、光の取り出し効率を向上させています。青色LEDから出た青色光はその一部が蛍光体によって緑色光や赤色光に変換され混色し、白色光が合成されますが、白色光の一部は光源のLEDの方向に向かって反射します。ダイクロイックフィルターはこの反射光中の赤色光と緑色光を透過方向に再度反射することで、バックライト内部における光の損失を防ぎ、高効率な光の取り出しと正確な光のコントロールを可能にします。
なお、液晶ディスプレイの高輝度化・高コントラスト化に貢献する蛍光体フィルムとダイクロイックフィルターを組み合わせて使用する光源の構造については、日本、アメリカ、中国、韓国にて特許を取得しております。


■ダイクロイックフィルターの効果イメージ(直下型LEDディスプレイ断面図)
直下型LEDディスプレイ断面図

■製品仕様
蛍光体フィルム「PSシリーズ」 従来の白色LED
バックライトに用いるLED 青色LED YAG黄色蛍光体入り白色LED
色域
NTSC面積比
CIE-1931 95% 72%
CIE-1976 114% 89%
相対輝度 104% 100%

■色域(CIE-1931色度図)
CIE-1931色度図