防汚層を真空蒸着法で形成し、最表面の耐久性を40倍以上に向上させた反射防止フィルム「ARフィルム HDシリーズ」を開発
~タッチパネル搭載ノートPCや車載ディスプレイへの採用拡大~
新製品
2020.07.20
デクセリアルズ株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:新家由久、以下 当社)は、最表面の防汚層を真空蒸着法で形成することで、耐久性を当社従来品比40倍以上※1に向上した反射防止フィルム「ARフィルム HDシリーズ」を開発しました。本開発品は既にサンプル出荷を実施しており、今年度設備投資をおこなって2021年春には量産体制を整え、順次供給を開始します。
当社の反射防止フィルムはスパッタリング技術によって金属酸化膜をナノ単位の精度で形成し、優れた低反射性能を実現した製品で、大手ノートPCメーカーや多くの車載ディスプレイに採用されています。また、フィルムの最表面には指紋や汚れをつきにくくし、容易に拭き取れるようにフッ素系樹脂を用いた防汚層を設けています。
一方、ノートPCではタッチパネルを搭載したモデルや、タブレット形状にもなる2in1タイプの普及が進み、ディスプレイの最表面で使用される反射防止フィルムには、指やスタイラスペンによる頻繁なタッチ動作に対応するためのより高い摺動耐久性が求められています。また、ノートPCの軽量化を図るためにカバーガラスを反射防止フィルムで代替したい、あるいは車載ディスプレイ用途において一層の高耐久化を図りたい、というお客さまの要望にお応えするには、反射防止フィルムの防汚層の摺動耐久性を向上させることが必要になっています。
当社は従来、フッ素系樹脂を溶媒に溶かした防汚材を塗布し、その後ヒーターによる乾燥で溶媒を揮発させ層を作る、いわゆるウェットコーティング法で防汚層を形成していましたが、このたび、摺動耐久性のさらなる向上を目指すべく、最表面の防汚層を真空蒸着で形成する製法を導入し、新たに「ARフィルム HDシリーズ」を開発しました。
本開発品は反射率0.5%以下、透過率95%以上という従来品の優れた光学特性はそのままに、防汚層の摺動耐久性は従来品比40倍以上を実現しました。
今回導入した真空蒸着法では、防汚層の材料であるフッ素系樹脂を気化させ、基材である反射防止層に直接付着させて層を形成していくため、ウェットコーティング法よりも緻密に防汚層が形成されます。このため、従来品以上の高耐久かつ低摩擦で滑りのよい防汚層を形成することができます。
また、真空蒸着法の導入に加えて、当社が持つ表面処理のノウハウや薄膜形成技術などを活用することで、摺動耐久性をより向上させました。
初期の水接触角は120°を実現し、かつ不織布ワイパーを用いた摺動性試験において、摺動回数が20,000回以上を超えても水接触角110°以上を維持し、高い防汚機能を保つことを確認しています※2。なお、本開発品に関連する特許については申請済です。
さらに、本開発品の製造においては、ロール to ロールプロセスで、反射防止層から防汚層の形成までを同一装置内でおこなう一貫成膜が可能であり、一層の生産効率向上を実現します。
■ウェットコーティング法と真空蒸着法による防汚層形成の比較
■仕様
開発品 | 当社従来品 | 試験条件 | ||
---|---|---|---|---|
防汚層の形成方法 | 真空蒸着法 | ウェットコーティング法 | ||
型番 | AR200-T0810-JD-HD | AR200-T0810-JD | ||
ヘイズ(%) | 0.3 | 0.3 | JIS K7105-6.4 | |
全光線透過率(%) | 96 | 96 | JIS K7105-5.5 | |
視感度反射率(%) | 0.17 | 0.17 | JIS Z8701 | |
反射色相 | a * | 2.3 | 2.2 | JIS Z8781 |
b * | -8.2 | -7.4 | ||
鉛筆硬度 | 3H | 3H |
JIS K5600-5-4 に準じて |
|
耐擦傷性 |
2,000往復 |
10往復 傷なし |
スチールウール試験 |
- ※1対摺動性試験(不織布ワイパー)による当社従来品(AR200-T0810-JD)比
- ※2当社試験に基づく