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経営/戦略

イノベーション創出に向けた取り組み

当社のイノベーション創出に向けた取り組みを、執行役員 技術戦略統括 Kuo-Hua Sung(クオ・フア・サン)よりご紹介いたします。

なお、「デクセリアルズ統合レポート 2022」の一部を抜粋する形で掲載しております。

執行役員 技術戦略統括
Dexerials Innovation Group (DIG)推進部担当
Kuo-Hua Sung(クオ・フア・サン)

2019年12月に当社に入社。翌年10月より技術戦略統括、DIG推進部などを担当し、新領域での技術戦略立案などに従事。2022年4月より執行役員に就任し、引き続き技術戦略統括、DIG推進部担当を担う。

アウトサイド・インのアプローチで社会課題の解決に資する技術領域の拡張を図る

2020年10月に発足した新組織Dexerials Innovation Group(以下「DIG」)推進部について、その概要や使命などを教えてください。

DIGの役割は、研究開発からマーケティングまでを連動させた全社の技術戦略の策定と推進です。当社は事業ポートフォリオの変革を進めていますが、DIGの使命はまさに、社会課題のなかから当社の事業機会を見定め、当社における技術的領域の拡張・再構築を図って新たなイノベーションや新規事業を創出していくことにあります。
DIGには、マーケティング、営業、研究開発、エンジニアリング、戦略企画、IP(知的財産)などの組織から社内横断的にメンバーが集まっています。多様な知識・知見をもったメンバーは、専門性の観点から業界が必要としている技術や課題を収集・分析し、次の戦略を検討するための情報を集約しています。またDIGで得られた情報が、すぐにそれぞれの所属組織に伝わる社内コミュニケーション・ハブとしての機能も果たしています。社内の横の拡がりだけでなく、各組織のマネジメントもメンバーに加わるなど、縦にも幅広く多様な人財が集まることで、それぞれの持つ専門性・知見を最大限活用して日々の活動を牽引すると同時に、必要なアライアンス戦略などを進めていくうえでも、グローバルで社内連携が円滑に進められる、ユニークな組織構造となっています。
当社はこれまで、私たちの強みをどこで活かせるかというインサイド・アウトのアプローチで事業を進めてきましたが、DIGという組織が発足したことで、アウトサイド・インのアプローチ、すなわち社会課題を解決するために、当社の持つ技術イノベーションを特定していく手法で、事業機会や新規事業の創出を図っています。

DIG発足以降、進めてきた取り組みについて聞かせてください。

発足以来、体系的なフレームワークを構築することに重点を置き、まずは包括的な研究を開始し、その分析をもとに戦略を立て、技術的な計画策定に落とし込むというプロセスを進めてきました。このプロセスの第1ラウンドはすでに終えており、主要な産業界におけるグローバルトレンドの調査・分析やSDGsとの関係性などを検証したうえで、当社として重点的に注力すべき領域として、自動車、ヘルスケア、社会インフラ、エネルギー、半導体の5領域を特定しました。これらの領域で競争優位性を発揮しうる当社の技術領域を明確にするなど、技術イノベーションの方向性を見出し、先ず当社として注力する技術領域を半導体とフォトニクスに絞り込みました。引き続き将来に向けた次の一手の検討を進めていきます。

DIGの取り組みを進めたなかで認識した課題、また課題への対応策について教えてください。

アウトサイド・インの手法で戦略を導き計画策定に落とし込むことは、当社にとって新しい取り組みでした。当初は社内の関係者に十分に納得したうえでの理解を得られるよう説明に相応の時間を費やしましたが、この1年で経営陣も含めDIGの手法に適応してきたように思います。また、膨大な研究を進めるなかで、総論と各論の間にはいくつものギャップがありました。自分たちで納得のいく明確な戦略を描くには、総論と各論の相互のつながりを理解することが大切でしたので、その点では苦労もしました。
新たな事業の創出を図るうえで課題となるのは、人財です。当社の持つスキルセットとの間に生じるナレッジギャップを解消するためにも、当社にはない知見を持つ人財をいかに獲得していくかは、大きなチャレンジです。

2022年3月にグループに加わった京都セミコンダクターとはどのように協働していきますか。

光半導体デバイス技術に強みを持つ株式会社京都セミコンダクターをグループ会社化したことは、当社が将来に向け進化する過程で重要なマイルストーンだととらえています。アウトサイド・インのアプローチでの研究からも、同社のユニークな技術ポートフォリオと当社とは非常に親和性が高く、連携を深めることで、半導体やフォトニクスの領域での技術イノベーションや開発面での相乗効果が期待できるとみています。特に、今後は半導体を始めとするさまざまな業界で、「情報」の伝送・抽出・加工処理・実装等をシステム上でおこなうことが必須になることを考えると、同社の持つ「情報」の検知技術をグループ内に取り込めたことは、将来の戦略を描いていくうえで、とてもエキサイティングなことだと思います。

当社の将来の成長に向けて、今後DIGが目指す姿について教えてください。

すでに技術イノベーションの方向性については特定できましたので、今後は、具体的な技術や事業ターゲットの絞り込みをおこないます。また、DIGの中核的な価値は、新たな技術開発でイノベーションを起こすことであるので、現在進行中のさまざまなパートナーとの連携からも、イノベーションの芽を育んでいきたいと思います。
また、世界はこれまで以上につながっていく方向にありますから、北米、欧州、アジア等の主要エリアが各地域で発揮している当社の強みや専門性についても、イノベーションを起こしながら、それらの強みをより一層、全体戦略にも取り入れていきたいと思います。

最後に、読者に向けて一言、メッセージをお願いします。

社会から信頼される企業であり続けるという当社のレガシーを継承しつつ、電子機器の領域で確立したポジションを新たな事業領域にも広げていきます。好奇心を大切にしながら、新たな技術やイノベーションにワクワクする気持ちをお客さまや社会に共有していきたいと思います。